2011年12月24日土曜日

冬の追い込み漁


お茶の水の石橋で、この冬最初の追い込み漁を実施しました。お茶の水からの地下水が流れる石橋下に、池より温かい水を求めて集まるブルーギルの稚魚を一網打尽にする方法です。2007年度(2008年1月)から毎冬続けているので、池のギルが減っているのかどうかを知る目安にもなります。

右の写真は獲れたギル稚魚を数えているところです。全部で898匹でした。初めて実施した2008年1月26日の2,799匹の三分の一以下ですが、昨冬最初の12月25日の269匹の三倍以上です。昨冬はギルの減少を実感したので、今年度も頑張って、ギル稚魚を(今日の分も含めて)計63,314匹、成魚(昨年度以前生まれ)を5,301匹捕獲したのですが、順調に減っているとは言い難い結果です。


しかし嬉しい発見もありました。ギル稚魚に混じって、大きめのモツゴが50匹いたのです。今年度の活動ではモツゴが以前と比べて僅かしか獲れなかったので、絶滅寸前なのではないかと心配していたのですが、しぶとく生き延びているものがまだいたのです。

追い込み漁の後は、ひょうたん池に移動して、保護池の落ち葉掃除を実施しました。 池をかき回すことになるため、落ち葉に混じってモツゴの稚魚が40匹ほど見つかり、保護池に戻されました。それらの稚魚は、この時期にしては本当に小さいです。以前のプールも、新たな保護池も、外来魚はいないものの、モツゴが生育するのに理想的な環境とはいえません。井の頭池のかい掘りが終わるまで保護池で守るだけでなく、そこで生まれた魚が池で成長し増えられるようにしたいものです。そのためには、今後も外来魚の駆除を続けることが必要です。

今年の活動は今日で終わりですが、冬の外来魚捕獲は年が明けてからが本番です。

2011年12月15日木曜日

保護池の落ち葉掃除


保護池ができたひょうたん池の畔にはメタセコイアとラクウショウの大木が立ち並んでいます。いずれも落葉性のスギ科樹木で、11月後半から12月いっぱいにかけて、大量の葉を落とします。池上に張り出した枝からの落ち葉は、以前なら水の流れに乗って池の外へ流れ去っていたのですが、今は保護池の柵があるため、保護池から流れ去ることはありません。落ち葉が沈んで腐ると水質が悪化する心配があるため、保護池の落ち葉を除去する作業が新たに必要になりました。

池に浮かんだ落ち葉を掬って調べてみたら、モツゴの小さな稚魚がかなりたくさん、一緒に獲れてしまうことが分かりました。大量の針葉の中に紛れ込んでいる小さくて細長い稚魚を見つけて救い出すのは、とても注意力と根気のいる作業です。井の頭池の落ち葉の清掃を請け負っている業者に任せるのは無理があるということで、保護池の落ち葉掃除は我々がやることになりました。今日までにすでに3回作業を実施しました。写真は7日のものですが、今日はもっとたくさんの落ち葉が浮かんでいました。木にはまだ葉がたくさん残っているので、もう1回か2回作業する必要がありそうです。

もっと頻繁に落ち葉を掬い取るのが理想ですが、そうもいかなかったため、すでに沈んでしまった葉もだいぶあるようです。池底に沈んだ落ち葉には、寒さを避けるためモツゴなどが潜り込んでいるので、除去は困難です。保護池に沈んだ落ち葉の除去作業は、水が温み始めて魚たちが泳ぎだすころ、落ち葉の腐敗が進む前に行いたいと思います。

2011年11月13日日曜日

モツゴ引越し


「井の頭外来生物問題協議会」の全団体と工事業者により、西園プールで増えていたモツゴとトウヨシノボリを、新しくできた保護池に引越しさせる作業を行いました。 ひと月ほど前から数回、西部公園緑地事務所の担当者と我々で、カゴワナなどを使ってあらかじめ捕獲をしていました。さらに9日には、試行を兼ねて、幼児プールのかい掘りも実施しました。今日は25mプールの水を抜いて、残っている魚をすっかり捕獲し、これまでに獲っておいた魚を含め、全部を引越しさせます。

西部公園緑地事務所担当者の指揮の下、業者が排水を担当し、西部事務所、井の頭かんさつ会、吉祥寺ライオンズクラブ、神田川ネットワークの面々が魚の捕獲と仕分けを行い、職員がそれをひょうたん池まで車で運びます。ひょうたん池で待つ生態工房の人たちがそれを受け取り、水温差に慣らしてから保護池に放します。生態工房は、外来魚と在来魚を展示して、来園者への啓発活動も実施しました。

写真はプールでの捕獲作業のようすです。プールの底には藻類を主成分とする「泥」が溜まっていて、水が減るとトロトロになるため、泥の中の稚魚を見つけるのも、それを泥の中から救い出すのもとても大変でした。(でも、外来魚を捕まえるのよりはずっと楽しい作業でした。) 魚のほかにオオヤマトンボなどのヤゴも見つかり、一緒に保護池に引越しました。

9時半に始まったイベントは午後4時に終了。あとは保護池の水位を上げれば引越しは完了です。その後は、保護池で在来生物が無事に育っているか、外来生物が入り込んでいないかなどをときどきチェックする必要があります。そのモニタリングは我々井の頭かんさつ会が担当します。

今回は、協議会の全団体がそれぞれの力を結集して実施した久しぶりのイベントでした。しかも、井の頭公園の管理者である西部公園緑地事務所が、井の頭池の外来生物問題を解決するという目標を見据えて主導した工事とイベントです。現在、井の頭池本体のかい掘り実現に向けて検討が進んでいます。我々が現状調査と啓発を目的に活動を始めたのが2007年の7月、活動は、問題の解決を訴える段階から、実際に問題を解決する段階に入りました。

2011年11月12日土曜日

在来生物保護池


解体されることになった西園プールに代わる在来生物の避難場所ができました。井の頭池の末端・ひょうたん池を半分に仕切って、在来生物の保護池としたのです。新たな避難場所についてはいろいろな案が出たのですが、結局、それほどは費用がかからず、管理も比較的容易な、ひょうたん池に作ることに決まりました。

ひょうたん池を保護池にする場合に重要なことは、そこにいる外来魚を完全に駆除することです。新保護池のかい掘りが仕切りの工事と並行して実施されました。周りに土嚢を積んで水をせき止め、ポンプで保護池の水を抜いて魚を捕獲します。最初の9日は我々も捕獲に加わりましたが、水がだいぶ残っていたため、一部しか獲れませんでした。その後、今日まで連日、工事業者と西部公園緑地事務所の担当者が頑張って、ほぼ魚を獲り切りました。写真は今日の捕獲作業のようすです。

私は二日分しか見ていませんが、狭いエリアにもかかわらず、じつにたくさんのブルーギル(おもに幼魚)が獲れました。オオクチバスの成魚と幼魚が数匹、アメリカザリガニも数匹獲れました。そのほかには、ギギの成魚と幼魚が1匹ずつ、ヌマチチブが数匹見つかりました。在来種はトウヨシノボリとテナガエビが少しずついましたが、モツゴとスジエビは1匹も見つかりませんでした。これが井の頭池の縮図だとするとショックです。この保護池で在来種が増えてほしいものです。

プールのモツゴとトウヨシノボリの引越しは、いよいよ明日です。

2011年10月19日水曜日

パタゴニアVYC結果発表

パタゴニア吉祥寺でVYC交流会がありました。出席者は全部で50名ほどだったそうです。マネージャーの挨拶と両団体の活動紹介の後、今回の投票結果が発表されました。「井の頭かんさつ会」の得票は140票、対する「たまあじさいの会」は157票でした。

というわけで、助成金の額が決まりました。「たまあじさいの会」のモニタリング活動は間違いなく資金が必要な活動ですから、その結果で良かったと思います。私としては、助成対象に選んでいただいたこと、そして140票もの投票をいただいたことに感謝しています。自分たちの活動を他の人たちに認めていただけるのは大いに励みになります。この日かんさつ会から参加した12名は皆同じ思いを持ったことと思います。助成金を有効に活用し、自然観察会と、外来魚対策などの環境保全活動をさらに充実させていきます。

写真を撮らなかったので、活動紹介に使ったスライドの表紙を載せておきます。”よく観なければ気づかない”、でも”観ているだけでは良くならない”、観察と実践が我々のモットーです。

2011年9月19日月曜日

パタゴニアでグラスルーツテーブル

パタゴニア吉祥寺の「グラスルーツテーブル」に出展しました。VYCの対象になっている二団体が、ブースを設けて活動を自らPRする催しです。会場は、店の外の、吉祥寺通りに面した駐車スペースです。

井の頭かんさつ会は、井の頭公園の、生きている昆虫、夏鳥キビタキの写真パネル、それから木の実の標本を展示して月例の自然観察会をPRし、プールで保護している生きたモツゴ(クチボソ)やPatagoniaのスタッフが作ってくれたダンボール製の魚のフィギュアなどを使って、外来魚問題への取り組みを説明しました。

一方の、日出町のゴミ最終処分場からの有害物質の拡散を長年調査している「たまあじさいの会」は、処分場周辺の地形が分かるジオラマ(模型)と写真パネルなどで、最終処分場の問題点と、モニタリング活動の重要性を訴えました。

井の頭公園や自然文化園への行き帰りの人たちなど、たくさん人が通る場所で開催できたので、来店者だけでなく、多くの人に訪れていただくことができました。

なお、”グラスルーツテーブル”とは最近アメリカで使われるようになった言葉だそうで、草の根活動をしている団体がブース(テーブル)を設けて、自分たちの活動をPRする催しのことだそうです。

グラスルーツテーブルは今日だけですが、VYCは10月5日まで続きます。

2011年9月18日日曜日

パタゴニアVYC

アウトドアウェアの高級ブランド「パタゴニア」(Patagonia)では、現在、VYC(Voice Your Choice)という取り組みを実施中です。パタゴニアは企業理念として環境保護に力を入れており、草の根環境活動をしている団体への支援を毎年続けています。VYCはそのひとつで、助成する団体を各店が二つ選定した上で、そのどちらを応援したいかを来店者に投票してもらうものです。投票が多かった団体には、もうひとつの団体より少し多い助成金が出ます。詳しくはパタゴニアのサイトをご覧ください。

今年5月に井の頭公園近くに開店した吉祥寺店では、「井の頭かんさつ会」と「たまあじさいの会」を対象に投票が行われています。写真のように、店内に説明パネルと投票箱があり、来店者は投票用紙に印刷されている二つの団体名のどちらかに丸印を付けて投票するしくみです。期間は9月8日(木)~10月5日(水)です。

素晴らしいと思うのは、店のスタッフ全員が二つの団体の活動について学び、期間中、自ら来店者に説明してもらえることです。そのために、スタッフ向けの勉強会を設定していただいたし、7月と8月と9月の井の頭かんさつ会にご参加いただきました。助成金をいただけるだけでも助かるのに、活動のPRまでしてもらえるのは、草の根団体にとってじつに有難い支援です。

来店者は、地域の環境問題を知ることができ、投票によってその活動に関わることができます。じつに素晴らしいしくみだと思います。あなたもぜひパタゴニア吉祥寺を訪れて、両団体の活動の説明を聞き、投票してください。

2011年8月14日日曜日

二千人

写真は13日の夕方から行われた第75回井の頭かんさつ会のオープニング時のようすです。大人27名、子供(中学生以下)10名の計37名の方にご参加いただき、スタッフ7名と一緒にナイトウォッチングを楽しみました。

じつは、第1回からのかんさつ会参加者数の累計が今回で二千人を超えました。いつの間に!?という感じですが、続けることは大切ですね。

我々は便宜上、自分たちの活動を自然観察会の開催と自然環境保全活動の二つに分けていますが、本当は自然観察会の開催も自然環境保全活動の一部です。身近な自然で起きている問題のほとんどは、人々が関心を持っていなかったため起きており、関心を持たない理由は知らないからです。身近な自然の面白さと素晴らしさを知れば、その大切さに気づき、それを守りさらに良くしたいという気持ちになります。そういう人を増やすのが、我々が身近な自然観察会を開いているいちばんの目的です。

延べ二千人が正味何人なのかは集計していませんが、井の頭公園の自然の理解者、あるいはファンが数百名は増えたことと思います。今回は37名の参加者のうち25名が初参加の方でした。

2011年6月30日木曜日

夜のバス稚魚捕獲結果


土管での繁殖抑制活動はかなりの成果を上げていますが、それだけでは十分ではありません。井の頭池では、その他の場所でもバスが産卵しているようで、稚魚の群れが見つかります。

そこで、昨年計6,418匹のバス稚魚を捕獲した「夜のバス稚魚捕獲」を今年も実施しました。バス稚魚は夜岸辺で群れて眠っていることがあり、岸辺から簡単に網で掬えることを昨年発見したのです。

今年は5月中旬から6月末までの期間に計22日夜の巡回を実施し、そのうち稚魚(または仔魚)の群れを見つけたのは12日でした。その結果、全長20mm以上の稚魚を計11,912匹捕獲できました。また、全長20mm未満の稚魚(仔魚扱い)も2度大量に捕獲しました。同じ期間の昼間に捕獲したバス稚魚は計824匹でしたから、夜の捕獲がいかに効率良いかが分かると思います。なお、大量に獲れた場合の捕獲数は100匹または200匹の重量から換算しているので、多少の誤差がありえます。

夜の捕獲活動には難しい点もあります。その第一は人の確保が難しいことです。生活のパターンを変える必要があるので、参加できる人は限られます。私は吉祥寺へ買い物に出かけるのを夜にずらして、そのついでに池を巡回しています。もし群れが見つかると、近くに住む仲間に連絡して、網やバケツを持ってきてもらいます。 夜の岸辺は危険度も増します。井の頭池のような、岸辺の形が単純で街灯もある、公園の池だからできることかもしれません。

とても強力な夜の捕獲ですが、残念ながら、バス稚魚の群れは夜は”必ず”岸辺で眠るわけではないようです。昼間見つけた群れを夜に発見できないことも多いのです。獲り残した稚魚は別の手段で捕獲するしかありません。

2011年6月25日土曜日

繁殖抑制活動結果

6月8日を最後にオオクチバスの産卵が見つからなくなったので、4月9日から毎週2回続けてきた繁殖抑制活動を今日で終了とし、ひょうたん池の人工産卵床5基も撤収しました。

この間に卵を発見して除去した回数はバスが58回、ブルーギルが36回にのぼりました。卵が見つかったのはほぼ全部が計20基ある土管(コンクリート沈床)で、人工産卵床への産卵は1回だけでした。なお、卵を守っているバスの雄親魚をほとんど捕獲できなかったので、卵を除去した後に再び産卵したため発見回数が増えている可能性があります。

浮上後のバス仔魚を大量に捕獲したことも計5回ありました。ちなみに我々は、大量捕獲が容易な全長20mm未満の稚魚は仔魚として扱い、捕獲個体数でなく、群れの捕獲回数で記録しています。

産卵前の成魚を捕獲することも繁殖抑制に有効です。この期間に手釣り、およびオダアミ、刺網で捕獲したバス成魚(全長25cm以上)は50匹で、そのうち産卵前のメスが少なくとも12匹いました。(全部を解剖したわけではないので、もっといると思います。)

本格的に繁殖抑制活動を始めて3年目ですが、土管への産卵回数は年々増えています。逆に、ひょうたん池の人工産卵床への産卵回数は減っています。バスがはたして増えているのか減っているのかは、今後も調査を続けないと判断できません。現時点ではっきりしているのは、もし繁殖抑制活動を行わなかったら、ものすごい数の稚魚が誕生したことです。

今後は、土管以外の場所で誕生した稚魚の捕獲と、成魚の捕獲に注力することになります。

ブルーギルが土管に頻繁に産卵したのも今年の特徴です。繁殖コロニーに群れているギルは手釣り可能で、多くの親魚を捕獲すれば、コロニーが崩壊することが分かりました。ギルの産卵期は9月ごろまで続くので、引き続き手釣りによる監視を続けます。

2011年4月16日土曜日

捕獲後の作業

外来魚の調査は捕獲した数を記録するだけでは終わりません。主だった個体は大きさ(全長)と重量を測定し、さらに解剖して卵巣/精巣のようすや胃の中身を調べます。それによって、産卵が終わっているかどうかが分かるし、何を食べているか、つまり、その種類の外来魚が池のどんな生き物に影響を与えているかが分かります。その他の小さな個体は、あとで大きさが分かるように並べて写真を撮り、まとめて重量を測ります。

今日の活動では、オオクチバス10匹とブルーギル11匹を捕獲しました。バスのうち6匹がメスで、いずれも成熟した大きな卵巣を持つ産卵前の個体でした。オスも放精前でした。産卵チェックでは5箇所で卵を見つけ除去したのですが、産卵前の成魚の捕獲は、それ以上の繁殖抑制効果があることになります。

今日は水温が上昇し、獲れたもの以外にも多くの魚影が見られました。池にはバスもギルもまだまだたくさんいます。

2011年4月9日土曜日

在来魚の避難場所

西園にあるプールです。水泳用としては2003年で使用が終わりましたが、2008年からは井の頭池の在来魚(モツゴとトウヨシノボリ)の避難場所として使用しています。しかし、西園の改修計画にともない、来年度早々に取り壊されることになったそうです。我々は、井の頭池のかい掘りが実現して外来魚が一掃されるまでプールを残してほしいと要望してきましたが、それは叶いそうにありません。

今日は生息状況の調査を行いました。昨年の猛暑のせいか水質は以前より悪化し、大地震のせいで浮かんでいた構造物はパラバラになっていましたが、カゴワナを入れて調べたら、モツゴとトウヨシノボリはちゃんと生存していることが分かりました。また、一緒に、ヒキガエルのオタマジャクシがたくさん入りました。夏には数種類のトンボのヤゴもたくさん見つかります。井の頭池が外来魚に占拠されている現在、生き物たちにとって貴重な場所です。

今日獲れた生き物(モツゴは200匹近く、トウヨシノボリは20匹ほど)は井の頭池に戻しました。まだ時期尚早で、バスの餌になるだけかもしれませんが、なんとか生き残り、次世代を残してほしいと思います

まだプールに残っている在来魚をどうするかが課題です。モツゴもトウヨシノボリも貴重種ではないので、池で絶滅したら他の場所から持ってくればよい、という意見もありますが、遺伝子のことまで考えると、井の頭池の在来魚を保護して増やすのがベストです。我々としては、プールに代わる在来魚の避難場所を作ってもらうよう、要望していくつもりです。

2011年3月26日土曜日

冬季漁法終了

この度の大震災で被災された皆様にお見舞いを申し上げますとともに、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りします。

ここ東京でも、厳しい状況が続く原発事故や、電力不足による計画停電などの影響により、人々の気分が暗くなりがちで、活力がやや落ち込んでいるように見えます。その一方で、自然の営みは地震の直後から停滞することなく回り続けています。ですから我々も、震災に気分的に負けることなく、自然観察会や環境保全活動を続けています。

今日は、この冬最後の「外来魚捕獲実験」を行いました。 今日で、冬季の漁法(石橋下の追い込み漁と岸辺でのガサガサ)は終了です。12月25日から今日までの期間に捕獲したブルーギルは計1,178匹でした。昨季の約3分の1です。この結果が池全体のギル生息数の変化を正確に反映しているわけではないと思いますが、ブルーギルがだいぶ減ったのは確実です。オオクチバスも間違いなく減っています。4月からは、それらの再生産(繁殖)を阻止するための繁殖抑制活動に移行します。 ガサガサでは、在来の魚やエビも獲れるので、その状況もある程度分かります。残念ながら、外来魚の減少に反比例して在来種が増えているわけではないのが実状です。もっと外来魚を減らす必要があるということでしょうか。

写真は、お茶の水池の一角で獲れたエビです。大きい二匹がスジエビの成体、小さい三匹はテナガエビの稚エビです。この冬、スジエビがまったく獲れなかったので心配していました。右側のスジエビはお腹に卵を持っています。増えるといいのですが。

2011年3月7日月曜日

外来魚の減らし方・バス編

写真は昨年4月17日、オオクチバスの産卵チェックをしているところです。池がこんなに浅いわけではなく、水中の人工物(通称:土管)の上で作業をしているのです。元々は水生植物を生やすためだった土管にバスが好んで産卵することを見つけてからは、池の3箇所に計20基ある土管は繁殖抑制の最重要拠点になりました。卵が見つかれば除去します。卵は3日ほどで孵化するので、その時期は毎週2回のチェックが欠かせません。昨年は、浅い場所に設置した伊豆沼式人工産卵床も含めて、計49回産卵を発見し、卵を除去しました。

それ以外の場所で誕生した稚魚は網で捕獲します。昨年は夜に稚魚を捕獲する方法を試し、成果を上げました。昼間は逃げ足の速い稚魚が、夜は岸辺でボーっと群れていて、岸から網で掬い放題に掬えることを発見したのです。

さらに成長した若魚、大きな成魚は、手釣り(竿を使わない釣り)で捕獲しています。卵を除去しても成魚が残っていればまた産卵するし、成魚を獲っても若魚がすぐに大きくなるので、成長段階すべてに捕獲圧をかけることが重要と考えています。

我々は活動開始以来、その努力と工夫を続けています。他の地域で活動されている方々に教えを請うとともに、井の頭池をよく観察して、外来魚の知られていない習性の発見や、井の頭池に適した手法の開発に努めています。井の頭かんさつ会は自然観察者の集まりですから、生き物の観察は得意です。1月末の琵琶湖での「外来漁情報交換会」では、我々が発見・考案した夜のバス稚魚捕獲ついても発表し、多くの質問をいただきました。

以上のような活動の結果、井の頭池のオオクチバスは確実に減っています。

2011年3月5日土曜日

冬の外来魚活動

今日の活動で捕獲した外来種です。ブルーギル73匹、オオクチバス(稚魚)2匹、アメリカザリガニ(稚エビ)1匹がいます。そのほかに、手釣りで全長41cmのバスを1匹捕獲しました。

我々が冬にも外来魚捕獲実験をしているのは、冬季だから可能な漁法を発見したからです。それは、「お茶の水」から流れ出している温かい地下水を求めて石橋下に集まるギル稚魚を一網打尽にする方法です。最初に試した2008年1月26日には2,799匹も獲れました。しかし今日そこで獲れたのは10匹だけです。今季最も獲れた12月25日でも269匹でしたから、井の頭池のブルーギルは間違いなく減っています。

その10匹以外のギル、バスとザリガニは、他の場所でのガサガサで獲りました。冬には岸辺から水中に伸びた木のひげ根に多くの稚魚が隠れています。それを池に入って網で捕獲するのです。獲れる数はそれほど多くはありませんが、冬まで生き延び成長した稚魚を捕獲するのは、夏の生まれたばかりの稚魚を捕獲するのと比べて、何倍もの生息数低減効果があると考えています。

手釣りした41cmのバスはメスで、卵巣が十分成熟していて、水温さえ上がればすぐ産卵できる状態でした。

我々の外来魚活動は、今後は、産卵前のバスとギルの成魚をできるだけ多く捕獲するとともに、産卵された卵を見つけて孵化を阻止する、繁殖抑制へと移っていきます。

2011年2月23日水曜日

広がるか、オダアミ

井の頭池でブルーギルの稚魚を捕獲するのに成果を上げている「オダアミ」のことを聞きに、茨城県土浦市で活動されているNPO法人の方が井の頭池に来られました。当方からの説明書を元に試作されたオダアミはなかなかのできで、開発者の二人からもお墨付きが出ました(写真)。

その土浦市の池では、大きなギルはかごワナなどで捕獲できているものの、小さなギルが捕獲できなかったとのことです。井の頭池と違ってヨシなどが生えている岸辺が多いそうで、実施に適した場所が見つかるかどうかが課題ですが、オダアミの活躍が期待されます。

今回の交流は、1月末に琵琶湖で行われた外来魚情報交換会で、「井の頭池の新漁法」として発表したのがきっかけです。オダアミは、とても簡単な構造なのに、井の頭池で一年間に78,345匹(2009年度)ものギルを捕獲した、優れものの漁具です。土浦でも成果が上がれば、他の場所にも広がるのではないでしょうか。